Redmi Watch 5 Lite: コスパ最強スマートウォッチとの上手な付き合い方
ネタのドラフトを元に Gemini で作成。
スマートウォッチ市場において、その圧倒的なコストパフォーマンスで存在感を放つ Xiaomi。 その最新作とも言える Redmi Watch 5 Lite を購入した。
ここ数年、スマートウォッチはコモディティ化が進んでいるとはいえ、 「自分にとって必要な機能」と「価格」のバランスが取れたモデルを見つけるのは意外と難しい。 多機能だが高価で毎日充電が必要なモデルか、安価だが機能が限定的でオモチャのようなモデルか。 そんな二極化が進む中で、この Redmi Watch 5 Lite は、絶妙なポジションを突いてきた。
購入の決め手は、なんといっても GPS搭載 であること、そしてその価格の手頃さだ。 通常、GPS(GNSS)を内蔵するモデルはどうしても価格が上がりがちだが、この機種はその常識を打ち破っている。 「安かろう悪かろう」ではないか? そんな不安も購入前には頭をよぎった。 しかし、実際に腕に巻き、生活を共にしてみると、その仕様の裏にある明確な設計思想や、 デバイスとの「上手な付き合い方」が見えてきた。
今回は、エンジニアの視点から、このデバイスの挙動を技術的に深掘りしつつ、 その特徴をポジティブに捉え直してみたいと思う。 そこには、限られたリソースの中で最適解を導き出そうとする、開発者たちの知恵が詰まっていた。
GPSの挙動に見る「割り切り」の美学と技術的妥当性
まず、購入の最大の動機であったGPS機能について詳しく見ていこう。 このデバイスのGPSは、非常に特徴的な挙動をする。
「GPSは、ワークアウト計測時のみ機能する」
これは、Google Mapsのタイムライン機能のように、 「何もしていなくても自動的に移動履歴を残してくれる」ことを期待していたユーザーにとっては、 一見すると制約、あるいは機能不足のように思えるかもしれない。 「せっかくのGPS搭載機なのに、なぜ?」と。
しかし、組み込みエンジニアリングの観点から見ると、これは非常に合理的で、かつ賢い選択だと言える。 少し技術的な話をしよう。 GPS(正確にはGNSS: Global Navigation Satellite System)の受信モジュールは、 スマートウォッチという小さな筐体の中に詰め込まれた部品の中で、最も電力を消費するパーツの一つだ。 衛星からの微弱な電波を捕捉し、時刻情報をデコードし、三次元測位計算を行う。このプロセスは、SoCに高い負荷をかける。
もし、このデバイスがバックグラウンドで常時測位を行い、移動ログを取り続けたとしたらどうなるか。 Xiaomiが誇る「通常使用で18日間」という驚異的なバッテリーライフは、瞬く間に崩壊するだろう。 おそらく、1日か2日持てば良い方になってしまう。 それは、「充電の手間から解放されたい」というライトユーザーの願いとは真逆の結果を招く。
Xiaomiの設計者は、「ユーザーが本当に高精度な位置情報を必要とする瞬間はいつか?」という問いに対し、 徹底的な分析を行ったはずだ。 そして導き出された答えが、 「ランニングやウォーキングといった、明確なアクティビティを行う時だけGPSを使えば良い」 という結論だったのだろう。
日常の移動、例えば通勤や通学、ちょっとした買い物。 そのルートを毎日GPSで記録する必要性は、実はそれほど高くない。 それよりも、週に数回のランニングの時だけ、スマホを持たずに身軽に走れること。 そして、それ以外の時間はバッテリー残量を気にせずに過ごせること。 このメリハリこそが、Redmi Watch 5 Lite の提供する価値なのだ。
不要な時は眠らせ、必要な時だけ叩き起こす。 この徹底したリソース管理こそが、このクラスのデバイスで実用的なバッテリー持ちを実現している秘訣だ。 私たちは「日常の無意識な移動ログ」という「あれば便利」な機能を諦める代わりに、 「充電器からの自由」という、ウェアラブルデバイスにおいて最も重要な「実利」を手に入れたのだ。 そう考えれば、この仕様はコストダウンの結果ではなく、最適なユーザー体験のための「英断」と評価できる。
ワークアウト検出:AIではなくユーザーの意思を尊重する設計
次に、 ワークアウト開始検出機能 について触れたい。 設定画面にはこの機能のON/OFFがある。 これをONにしておくと、ユーザーが走り出したり歩き出したりしたことを加速度センサー等のパターンから検知して通知してくれる。
ここで興味深いのは、この機能が 「勝手に計測を開始する(自動記録)」のではなく、 「検出したことを表示・通知し、計測するかどうかをユーザーに尋ねる(提案)」 という挙動になっている点だ。
一部のハイエンド機(数万円クラス)では、 「ウォーキング中ですね? 記録しておきましたよ」と、遡って自動記録してくれるものもある。 それと比較すると、「なぜ自動で始まらないのか?」「いちいち画面をタップしてOKするのが面倒だ」と感じるかもしれない。 しかし、ここにもまた、ユーザー体験(UX)への深い配慮が見え隠れする。
誤検知(False Positive)の問題だ。 例えば、遅刻しそうで駅まで少し走っただけの場合。 あるいは、犬の散歩で不規則な動きをした場合。 これをすべて「ワークアウト」として自動記録されてしまったらどうなるか。 後でMi Fitnessアプリのログを見返した時、 「謎の3分間のランニング」や「記録するほどでもない細切れのウォーキング」が大量に残っていることになる。 これは、ログ(記録)としての質を下げる「ノイズ」だ。
Redmi Watch 5 Lite は、あくまで最終決定権をユーザーに委ねている。 「今、ある程度の強度の運動パターンを検知しましたが、これは記録に残すべきフィットネスですか?」 と問いかけることで、意図しない記録を防ぎ、本当に残したいデータだけをクリーンに保つことができる。
これは、デジタルデータ整理の手間を省く、ある種の「親切設計」とも受け取れる。 また、画面を「開始」ボタンをタップするというワンアクションは、 「よし、ここからが本番だ」と自分の行動にスイッチを入れる儀式だと思えば悪くない。 機械任せにするのではなく、自分の意思でスタートを切る。 その主体性を、このウォッチは尊重してくれているのだ。
睡眠検知が教えてくれる「静止」の真実と健康への気づき
最後に、 睡眠検知機能 について。 ドラフト(下書き)のメモにも書いたが、この機能は非常に敏感だ。 椅子に座って集中して仕事をしていると、それを「睡眠」として検知してしまうことがある。
設定にある「高度な睡眠検知」機能を有効にしても、この傾向は大きくは変わらない。 センサーが微細な動きや心拍変動を読み取ろうと努力しているのは分かるが、 それでもやはり、静止状態のデスクワークを睡眠と誤認してしまう。 これを単に「精度が低い」「誤検知だ」と切り捨てるのは簡単だ。 多くのレビュー記事ではマイナスポイントとして挙げられるだろう。
しかし、私はここに全く別の、そして非常に重要な示唆を見出した。 考えてみてほしい。 スマートウォッチが「この人は寝ている」と判断する条件とは何か? それは、加速度センサーがほとんど動きを検知せず、心拍数が平穏な状態が続くことだ。
つまり、デスクワーク中、PCモニターに向かってキーボードを叩いている時、 私の身体は、機械が「死体か、寝ているか」と迷うほどに 動いていない のだ。 指先だけが高速で動いているが、体幹や腕は完全に固定され、まるで彫像のように固まっている。 エコノミークラス症候群予備軍と言ってもいい。 これは健康という観点から見れば、由々しき事態である。
この「誤検知」は、逆説的に「お前はもっと動くべきだ」というデバイスからの警告かもしれない。 仕事中に「睡眠」と判定された時間帯は、 「血流が滞り、代謝が落ち、健康リスクが高まっている時間」と読み替えることができる。
もし、完璧な精度を持ったウォッチなら、「これは座って仕事をしている状態です」と正しく判定し、 「睡眠」ログには記録しないだろう。 その結果、私は自分がどれだけ動いていないかに気づくことなく、健康を害していたかもしれない。 しかし、Redmi Watch 5 Lite は、その「正直すぎる」判定によって、私の運動不足(不動状態)を可視化してくれた。
そう考えると、この過敏な睡眠検知機能は、 我々デスクワーカーに対する、最もシビアで正直な活動量計として機能しているのではないだろうか。 「寝ていると判定されない程度には、こまめに身体を動かせ。伸びをしろ。コーヒーを淹れに行け。」 そんなメッセージを、このウォッチは発しているのかもしれない。 (これは極めてポジティブに解釈しすぎかもしれないが、事実、私はこれに気づいてから意識的に立つようになった。)
まとめ:技術の「癖」を愛でるガジェットライフ
Xiaomi Redmi Watch 5 Lite は、 「GPSは必要な時だけリソースを割く」 「計測はユーザーの同意のもとで行う」 「静止状態は睡眠(休息)とみなす」 という、非常にシンプルで分かりやすいロジックで動いている。
これらの挙動を、ハイエンド機との比較で「不便」「低機能」と捉えるか、 「デバイスの個性」「設計思想」と捉えるかで、ガジェットライフの豊かさは変わってくる。 7,000円でお釣りが来る価格で、これだけのセンサーと機能を詰め込み、 GPSを搭載し、さらに実用的なバッテリー持ちを死守する。 その背後には、限られたコストとハードウェアリソースの中で、 どうすればユーザーに最大の価値を届けられるか、その最適解を探そうとしたエンジニアたちの苦労と工夫が詰まっている。
完璧な人間がいないように、完璧なガジェットも存在しない。 その「癖」を理解し、自分の生活スタイルに合わせて使いこなす過程こそが、 ガジェット愛好家の楽しみなのだ。
GPSを使うときは明示的にモードを切り替え、 ワークアウト通知が来たら「おっと、運動のチャンスか」と捉え、 仕事中に睡眠判定されたら「休憩してストレッチしよう」と考える。
そうやってデバイスと対話しながら使う Redmi Watch 5 Lite は、 価格以上の価値と、日々の生活への「気づき」を与えてくれる。 単なる安物の時計ではない。 これは、私たちの生活を少しだけスマート(賢く)にするための、愛すべき相棒なのだ。